「人の役に立つ仕事がしたい」「スクールカウンセラーになりたい」「病院で働きたい」など、心理カウンセラーを目指す人におすすめの資格が“公認心理師”。
公認心理師は、2017年に定められた日本初のカウンセラー国家資格です。公認心理師になるには、「公認心理師カリキュラム」を大学で受講する必要があります。その他にも受験ルートが多数あるため、受験資格にも関心が集まっています。
今回は公認心理師の「受験資格取得方法」「仕事内容」「臨床心理士等との違い」「公認心理師になるには何年必要か」「なるにはサイト運営のLINE相談に集まるよくある質問」を紹介します。公認心理師になるにはどうすればいいか知りたい方はぜひ参考にしてみてくださいね。
- 国試の受験資格を解説【公認心理師になるには?】
- 臨床心理士や他の資格との違い
- なるには何年かかる?状況別の最短期間を紹介
- 公認心理師試験概要を解説
- 「なるには」に寄せられた“よくある質問“
- 公認心理師になるにはカリキュラムのある大学へ行こう
国試の受験資格を解説【公認心理師になるには?】
公認心理師になるには「公認心理師カリキュラム」のある大学で「必要科目を修了し大学院へ進学」もしくは「必要科目を修了し文部科学省・厚生労働省の指定する施設で2年以上の実務経験」を経て、国家試験を受験し合格すれば公認心理師になれます。
ただし、カリキュラムは2017年に資格と共に誕生したため、最新の第5回の受験資格者で「カリキュラムのある大学+実務経験2年以上」の人はまだ該当する人はいません。
<これから進学して公認心理師になるには>
・平成29年9月15日より前に4年制大学に在籍または卒業していれば
大学院に進学または指定施設で実務経験を積む
・公認心理師カリキュラムのある大学への進学し必修科目を修了し
大学院に進学または指定施設で実務経験を積む
いずれの状況でも公認心理師になるには「大学院卒業」または「指定施設で実務経験」を終えた人のみが公認心理師国家試験受験という流れとなります。2022年(第5回)まではGルートという現役カウンセラーや看護師等が受験できる制度もありましたが、この特例措置は終了しました。
臨床心理士や他の資格との違い
公認心理師になるには受験ルートが少々ややこしいため、「公認心理師になるには色々大変なら他の資格にしようかな」と考える人も少なくありません。ここでは公認心理師になるには知っておきたい仕事内容と、臨床心理士やその他の資格との違いを解説します。
公認心理師の仕事内容
公認心理師法によると、医療や福祉、教育等の分野で専門的知識・技術を持ち、以下の業務を行うことが公認心理師とされています。
・心の悩みを持つ人(以下、相談者)の心理状態を観察し、結果を分析する
・相談者の相談に応じ、助言や指導、その他の援助を行う
・相談者に関わる人々の相談に応じ、助言や指導、その他の援助を行う
・心の健康に関する教育及び情報の提供を行う
簡単にいうと「心理的アセスメントや査定」「カウンセリングや相談」「関係者相談(コンサルテーションやスーパーバイズ)」「公衆衛生や教育、啓発」というものが公認心理師の仕事内容です。医療や福祉、教育、産業、司法等で公認心理師は活躍しています。
臨床心理士の違い
臨床心理士は、カウンセラー民間資格の中で最も知名度と難易度が高い資格です。臨床心理士になるには「指定大学院卒業者」「医師免許と2年以上の心理臨床経験のある者」が臨床心理士資格試験を受験できます。公認心理師との大きな違いは、5年ごとに資格の更新制度があることや法で定められている業務の違いがあると言われています。
臨床心理士は「心理的アセスメントや査定」「カウンセリングや相談」は公認心理師と同じですが、加えて地域援助や調査研究なども求められます。地域援助はコンサルテーション等と似ていますが、臨床心理士は研究をし、公認心理師は情報を発信するという役割の違いがあります。また、公認心理師は「査定」とはありますが「心理検査」の明記はないため、看護師+公認心理師、精神保健福祉士+公認心理師というGルートの心理職は検査を学んでいない人もいるという違いもあります。
似ている関連資格
公認心理師になるには大学と大学院進学が必要ですが、それ以外の方法で資格が取れる相談業務もあります。役割や職場などは異なりますが、「相談業務」をする人として共通する資格を紹介します。
・認定心理士
・精神保健福祉士(国)
・社会福祉士(国)
・臨床発達心理士
・産業カウンセラー
・キャリアコンサルタント(国)
・学校心理士
・各心理カウンセラー資格
(国)と書いてある資格は公認心理師同様に国家資格です。公認心理師と比較して難易度が低いわけではなく、精神保健福祉士や社会福祉士になるには大学院進学まではしなくても良いという点で短い期間で目指せるメリットがあります。また、キャリアコンサルタントになるには一定期間講習を受けて試験に挑む必要があるため、こちらも難易度が高いと捉える人もいるようです。さらに産業カウンセラーになるには「一般社団法人日本産業カウンセラー協会」の民間資格試験の受験が必要など、各協会等に取得までの方法が記載されています。
なるには何年かかる?状況別の最短期間を紹介
公認心理師になるには、大学院進学や指定施設の実務経験が必要と解説しました。最短ルートで公認心理師になるには、現在の皆さんの状況次第で異なります。例えば今から大学に進学して公認心理師になるには「大学4年間+大学院2年間」もしくは「大学4年間+指定施設2年間」で“最短6年”かかるのです。
次に平成29年9月15日の時点で4年制大学に在籍しているもしくは、卒業している人は“最短2年”かかります。この最短2年は大学院進学もしくは指定施設で2年間実務経験を積むのいずれかです。さらに平成29年9月15日の時点で臨床心理士指定大学院に在籍しているもしくは、卒業している人は“最短0年”です。受験しようという気持ちがあれば第6回公認心理師資格試験を受験できます。
細かな基準は日本心理研修センターのサイトに掲載されていますが、「公認心理師カリキュラムの履修+大学院or実務経験」以上の知識及び技能を持つ人も“最短0年”で受験できます。
まとめると、これから大学進学する人は6年、平成29年9月に大学在籍中か既卒者は2年、平成29年9月に大学院在籍中か既卒者は0年で目指せます。さらに、大学を卒業している人は編入することで4年間通う必要なく大学院と合わせて4年で目指せる可能性もあります。編入の場合は本来1・2年次に履修するカリキュラムもあるため、履修漏れがないかを必ず確認しましょう!
公認心理師試験概要を解説
公認心理師になるには、大学院卒業後の国試が必須です。ここでは、公認心理師になるには必須である「公認心理師試験」の試験方式や出題傾向、試験費用、合格率や合格基準を解説します。公認心理師になるには国家試験が必須ですので、まだ受験しなくても一通り確認しておきましょう!
公認心理師になるには”国試合格”が必須
公認心理師資格試験にはブループリント(出題割合の目安)が公表されています。その目安をもとに全問マークシート方式(150~200問)で出題されます。基礎知識に関する問題も出題されますが、ケース問題(Aさんが○○の症状を持っている場合、どんな検査が適しているかなど)が多く出題されているようです。つまり、知識としての理解だけではなく実践として生かせるかが問われることになります。
国家試験の出題範囲
①公認心理師としての職責の自覚
②問題解決能力と生涯学習
③多職種連携、地域連携
④心理学、臨床心理学の全体像
⑤心理学における研究
⑥心理学に関する実験
⑦知覚及び認知
⑧学習及び言語
⑨感情及び人格
⑩脳や神経の働き
⑪社会及び集団に関した心理学
⑫発達
⑬障害者(児)の心理学
⑭心理状態の観察及び結果の分析
⑮心理に関する支援
⑯健康や医療に関した心理学
⑰福祉に関する心理学
⑱教育に関する心理学
⑲司法や犯罪に関する心理学
⑳産業や組織に関する心理学
㉑人体構造と機能および疾病
㉒精神疾患とその治療
㉓公認心理師に関する制度
㉔その他
2022年現在、特に高い割合の領域は⑯~⑱が各9%、⑭が8%、㉓が6%です。①~③はまとめて9%なのでそれぞれ3%ずつくらいを目安に考えるとよいでしょう。
受験費用と登録費用【公認心理師になるには】
実は公認心理師になるには試験に合格すれば「公認心理師です」と名乗れるわけではありません。公認心理師登録簿に登録して、はじめて公認心理師と名乗ることが認められます。名乗れるようになるには登録手数料(7,200円)が必要です。ちなみに公認心理師国家試験の受験費用(検定料)は28,700円です。高いと感じる人も多いですが、合格すれば更新の必要なく一生持っていられます。※臨床心理士は5年ごとに資格更新制で、5年の間に数千円~数万円する研修等をたくさん受けて更新料もかかります。
合格率と合格基準【公認心理師になるには】
公認心理師は2022年11月現在で第5回目が終了しています。公認心理師は年1回の試験です。今は毎年時期が違いますが、2~3年後には社会福祉士や精神保健福祉士同様に2月で固定するという計画も発表されています。厚生労働省によれば第6回公認心理師試験は2023年5月頃を予定しているそうです。
公認心理師はまだ新しい資格なので合格基準も徐々に変更されています。第5回試験の基準は「230点中135 点以上の者(総得点の60%程度以上)」でした。ただし、問題の難易度で補正する考えを公表しているため、134点以下の合格者もいるようです。近年の大きな変更点は、第3回までは138点以上だった基準に対し、第4回は143点以上に引き上げられ、第5回は135点に引き下げられていること。これらの基準変更は予告がなかったことから、今後も急な変更は不自然ではないと考えられます。
歴代の合格率は、「第1回79.1%」「第2回46.4%」「第3回53.4%」「第4回58.6%」「第5回48.3%」でした。合格点が引きあがった年が近年では合格率が高いことを考えると、まだ出題の難易度は定まっていないという噂もあります。
「なるには」に寄せられた“よくある質問“
最後になるにはサイトが運営する「進路の神様LINE」でよく頂く質問をまとめてみました。一人ひとり状況は異なるため、参考にしていただければ幸いです。
学校選びについて
Q.心理学部に行けばなれる?
A.公認心理師カリキュラムがあり、カリキュラムで必要単位を取得すれば受験資格が得られます(その後、大学院や実務経験が必要)。公認心理師カリキュラムがあれば、心理学部ではなくても「社会福祉学部」や「文学部」「教育学部」等でも目指せます!また、大学院もある大学を選ぶことで「内部進学者」として院試を受けられます!
カリキュラムの有無はご自身で調べることもできますが、LINE相談でお探しすることも可能です。
Q.受験科目は文系?理系?
A.文系学部が多い為、どちらかと言えば文系です。ただし人間科学部や医療系の学部の場合は、理系が受験科目の場合もあります。ただし、入学後は統計や実験などの授業があり、公認心理師試験の領域にも「脳や神経」「人体構造と機能」があるように理系も勉強しておいて損はないでしょう!
Q.公認心理師になるには通信制大学でも大丈夫?
A.目指せます!通学課程よりは公認心理師カリキュラムのある大学は少ないですが、「放送大学」「東京福祉大学」「聖徳大学」「京都橘大学」は2022年11月現在公認心理師カリキュラムが設置されています。
特例措置等
Q.看護師ですが、今から公認心理師になれますか?
A.なれます!最終学歴によってルートは異なりますが、公認心理師カリキュラムのある大学に進学し指定科目を修得すれば目指せます。第5回目までは5年以上働いていて「現任者講習」を受ければ受験資格が得られたので、受験資格があると書いてある記事もありますが、今後はカリキュラムを修得する必要があります。
Q.実務経験になる指定施設はどこですか?
A.厚生労働省によると「少年鑑別所及び刑事施設」「一般財団法人愛成会 弘前愛成会病院」「裁判所職員総合研修所及び家庭裁判所」「医療法人社団至空会 メンタルクリニック・ダダ」「医療法人社団心劇会 さっぽろ駅前クリニック」「学校法人川崎学園 川崎医科大学附属病院」「学校法人川崎学園 川崎医科大学総合医療センター」「社会福祉法人風と虹 筑後いずみ園」「社会福祉法人楡の会」の9か所。令和2年9月末以降は増えていない状況のようです。
Q.大学院へ行かないとだめ?
大学院以外のルートからなるには、上記9か所の施設のいずれかに就職し、実務経験を2年積めば受験資格が得られます。試験自体は受験資格を持っていれば、何度でも挑戦できるそうです。
ほかの資格や将来性
Q.臨床心理士も取った方がいい?臨床心理士になるには?
A.可能であれば、どちらも取っておくといいでしょう!大学院に行けば、臨床心理士の受験資格も手に入ります。また、2022年現在の求人を見ると教育・療育系は「臨床心理士もしくは公認心理師」ですが、医療系の多くは「臨床心理士・公認心理師」という記載が多くみられます。産業は企業の求める人材によって表記にばらつきがありました。自分の目指す方向性で決めてもいいですね!
Q.公認心理師の勤務先は?少ないの?
A.公認心理師の就職は主に医療・福祉、教育、企業、司法などとなります。個人事業主としてカウンセリングルームを開設している人もいるようです。給料はピンキリですが、その理由としては元々臨床心理士が複数の職場を掛け持ちする非常勤の人が多いことも考えられます。様々な経験を積むという意味で、週1~3くらいの職場を2~3か所という働き方は珍しくないようです。
勤務先が少ないかというと、場所はあっても枠が少ないのが現状です。心理職は1つの職場に1~3人という場所もあり、希望の勤務先には空きがないことはあるでしょう。しかし、昔よりもメンタルヘルスへの需要は高まっていおり、以前は少なかった企業のカウンセラーや療育施設の開設による募集も増えています。
公認心理師になるにはカリキュラムのある大学へ行こう
今回は公認心理師について解説しました。これから公認心理師になるには、多くの場合「公認心理師カリキュラム+指定大学院」の計6年かかります。長い道のりに感じる人もいるでしょう。しかし、医師や薬剤師も大学のみで6年ですので、公認心理師もそれくらいの勉強や実習が必要な職業ということになります。
また、メンタルケアは日本でも世界でも求められています。今後さらに需要の高まる職業であり、AI等では代われない仕事です。長い道のりだとしても、目指す価値はあるでしょう!