通信制大学院への進学を考えているものの、「どんな入試があるの?」「社会人になってからでも受験できる?」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
通信制大学院の入試では、書類審査や研究計画書、面接を中心に選考することが多く、筆記試験が加わる場合もあります。「通信制だから簡単」とは限らないため、志望する大学院の選考内容を早めに把握しておくことが大切です。
この記事では、通信制大学院の入試の内容、出願資格、研究計画書や面接対策をまとめて解説します。
なお、入試方式や日程、出願条件は大学院・研究科ごとに異なり、年度によって変わることもあります。一般的な傾向を紹介していますので、実際に受験する際は必ず最新の募集要項で確認してください。
目次
通信制大学院の入試で行われる選考方法
通信制大学院の入試では、主に次のような選考方法が組み合わせて行われます。
| 選考方法 | 主な内容 |
|---|---|
| 書類審査 | 志望理由や経歴、これまでの学習・研究内容などを確認 |
| 研究計画書 | 大学院で研究したいテーマや目的、研究方法などを確認 |
| 面接・口述試験 | 志望理由や研究内容について質問 |
| 小論文 | 与えられたテーマについて論理的に考え、文章で説明 |
| 専門科目 | 研究分野に関する基礎知識や専門知識を確認 |
| 外国語 | 英語などの読解力を確認 |
これらすべてが課されるわけではなく、研究計画書と面接だけで選考する大学院もあれば、筆記試験を組み合わせる大学院もあります。
多くの場合、中心になるのは研究計画書です。提出した研究計画書の内容をもとに面接が行われることも多く、研究テーマだけでなく、研究の目的や方法、実現可能性まで整理されているかが見られます。研究計画書の書き方や、面接・筆記試験の対策は後ほど詳しく解説します。

通信制大学院の入試は難しい?難易度と倍率
通信制大学院だから簡単とは限らない
通信制大学院の入試を「難しい」「簡単」と一括りにすることはできません。募集人数や入試方法、研究分野、求められる専門知識は、大学院ごとに大きく違うからです。
また、通信制はあくまで「学び方」の違いであり、通信制だからといって入試の基準が低くなるわけではありません。大学院の入試では、試験問題に答えられるかだけでなく、「大学院で何を研究したいのか」「その研究を進める準備ができているか」が重視されます。研究計画書の論理構成や、研究を進めるための基礎的な力を選考材料にしている大学院も少なくありません。
そのため、難易度だけを気にするよりも、自分の研究したいテーマと大学院が合っているかを確認することのほうが大切です。
通信制大学院の倍率はどれくらい?
倍率は、研究科によって大きく差があります。志願者が定員を下回る研究科がある一方で、人気の分野や募集人数が少ない研究科では、倍率が高くなることもあります。
また、通信制大学院は社会人の志願者が多く、仕事の経験を踏まえた研究計画を持った人と競うことになる点も意識しておきたいところです。
志願者数や合格者数を公開している場合は、募集要項や大学院の公式サイトに掲載されていることが多いので、資料を取り寄せる際にあわせて確認してみましょう。
通信制大学院の出願資格と必要書類
入試対策を始める前に、自分が出願資格を満たしているか、どのような書類が必要かを確認しておきましょう。修士課程や博士前期課程では、大学を卒業した人や、大学卒業と同等以上の学力があると認められた人が対象になるのが一般的です。
大学を卒業していなくても受験できる場合がある
大学を卒業していない場合でも、大学院の個別の入学資格審査を受けることで、出願資格が認められる場合があります。たとえば、短期大学や専門学校を卒業している方、社会人として一定の実務経験がある方などが対象になり得ます。
「大学を卒業していないから通信制大学院へは進学できない」と最初から諦めず、気になる通信制大学院の出願資格を確認してみましょう。ただし、資格審査は通常の出願期間よりも前に締め切られることが多いため、早めの確認が必要です。
大学時代と違う分野でも受験できる?
大学で学んだ分野とは異なる研究科へ進学できる場合もあります。「大学では経営学を学んだけれど、大学院では教育について研究したい」といった進路も考えられます。
ただし、出願できることと、入試に対応できることは別の話です。研究分野によっては一定の専門知識が求められるため、入試科目や必要とされる知識を確認し、足りない部分は入門書などで補っておきましょう。
通信制大学院の主な出願書類
出願時には、次のような書類を求められることが多いです。
| 書類 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 入学願書 | 大学院所定の様式に記入する。Web出願の場合もある |
| 研究計画書 | 研究テーマや目的、方法などをまとめる。字数や書式の指定を確認する |
| 志望理由書 | 研究計画書と別に求められる場合がある |
| 卒業証明書・成績証明書 | 出身大学に発行を依頼する。取り寄せに時間がかかることもある |
| 職務経歴書 | 社会人選抜などで求められる場合がある |
| 写真 | サイズや撮影時期の指定があることが多い |
| 検定料の払込証明 | 払込方法は大学院の指定に従う |
見落としやすいのが、卒業証明書や成績証明書です。卒業から年数が経っている場合、郵送での取り寄せに1〜2週間ほどかかることもあります。出身大学の証明書発行方法を早めに確認しておきましょう。
検定料の目安
通信制大学院の入学検定料は、3万円前後が目安です。複数の通信制大学院を受験する場合は、その分の検定料もかかる点を踏まえて計画しておきましょう。
通信制大学院の入試の流れと時期
通信制大学院の入試の流れ
入試は、一般的に次のような流れで進みます。
| ステップ | 主な内容 |
|---|---|
| ① 情報収集・資料請求 | 募集要項を取り寄せ、入試方式や出願資格を確認する |
| ② 出願資格審査(必要な場合) | 大学を卒業していない場合などに、出願前に審査を受ける |
| ③ 出願 | 願書・研究計画書などの書類を提出し、検定料を納める |
| ④ 書類審査 | 提出書類をもとに一次選考が行われる場合がある |
| ⑤ 筆記試験・面接 | 小論文や専門科目、研究計画書をもとにした面接など |
| ⑥ 合格発表 | Webや郵送で結果が通知される |
| ⑦ 入学手続き | 入学金・学費の納入、必要書類の提出 |
合格後の入学手続きでは、入学金などの納入期限が短く設定されていることもあります。併願を考えている場合は、手続き期限と他校の合格発表日の関係も確認しておくと安心です。学費の目安については「通信制大学院の学費」で詳しく解説しています。
通信制大学院の入試の時期
通信制大学院の多くは4月入学で、入試は前年の秋から冬にかけて行われるのが一般的です。1年のうちに入試を複数回に分けて実施し、1回目で定員に達しなかった場合に2回目を行う大学院もあります。秋入学(10月入学など)を設けている大学院では、春から夏にかけて入試が行われます。
入試の回数が複数ある場合でも、後半の回は募集人数が少なくなっていることがあります。「まだ次があるから」と先延ばしにせず、第一志望の大学院は早い回での受験を検討しておくとよいでしょう。
入試準備の目安スケジュール
4月入学・秋入試を想定した場合、準備の目安は次のとおりです。
| 時期の目安 | 主な準備 |
|---|---|
| 6か月〜1年前 | 興味のある研究分野を整理し、資料請求で大学院の情報を集める |
| 4〜6か月前 | 研究テーマを絞り込み、関連する本や論文を読む |
| 3〜4か月前 | 募集要項を確認し、研究計画書を作成する。証明書類の取り寄せを始める |
| 1〜3か月前 | 出願、筆記試験・面接の準備 |
| 入試直前 | 研究計画書を読み直し、面接練習をする |
気になる大学院がいくつかある場合は、資料請求でまとめて募集要項を取り寄せ、日程を並べて比較するのがおすすめです。
研究計画書の書き方のポイント
研究計画書とは、簡単にいえば「大学院に入ったら、何を、なぜ、どのように研究したいのか」をまとめた書類です。面接ではこの内容をもとに質問されることが多いため、入試全体の土台になる書類といえます。
研究計画書に盛り込む主な内容
指定の書式によって項目は変わりますが、主に次のような内容を整理します。
- 研究テーマ
- 研究したい背景や問題意識
- 研究の目的
- これまでに行われている関連研究(先行研究)
- 研究の方法
- 研究によって明らかにしたいこと
- 参考文献
「興味がある」から「明らかにしたいこと」へ絞り込む
研究計画書で大切なのは、「○○に興味がある」で終わらせないことです。たとえば「不登校について研究したい」だけでは、何を明らかにしたいのかが伝わりません。
そこから「どのような問題に注目するのか」「誰を対象にするのか」「何を明らかにしたいのか」を順番に具体化していきます。
| 段階 | テーマの例 |
|---|---|
| 興味の段階 | 不登校について研究したい |
| 対象を絞る | 中学校で不登校を経験した生徒について研究したい |
| 問いを立てる | 中学校で不登校を経験した生徒が、高校進学後に学校へ適応できるかどうかには、どのような要因が影響しているのかを明らかにしたい |
ここまで絞り込めると、どのような方法で調べればよいか(インタビューなのか、アンケートなのか、など)も考えやすくなります。
最初から完璧な研究計画でなくてもよい
「専門家でもないのに研究計画なんて書けない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、入学前の段階で研究の結論が出ている必要はありません。
重要なのは、何に疑問を持っているのか、なぜ研究したいのか、どのように調べようとしているのかを整理できていることです。まずは自分が大学院で考えたいテーマを言葉にするところから始めてみましょう。
通信制大学院の入試面接・筆記試験の対策
入試面接・口述試験で聞かれること
面接や口述試験では、次のようなことを確認されることが多いです。
- なぜ大学院へ進学したいのか
- なぜこの研究テーマを選んだのか
- どのような方法で研究するのか
- なぜこの大学院を選んだのか
- 仕事と学業をどう両立するのか
- 修了後に研究をどう活かしたいのか
研究計画書を提出している場合は、その内容を掘り下げる質問が中心になります。対策として重要なのは、回答を丸暗記することではなく、「なぜこのテーマなのか」「何を明らかにしたいのか」を自分の言葉で説明できるようにしておくことです。試験直前には研究計画書を読み直し、面接での回答と書類の内容が矛盾しないよう確認しておきましょう。
専門科目
専門科目がある場合は、志望する研究分野の基礎知識を確認しておきましょう。過去問を公開している大学院もあるため、まずは募集要項や過去問で出題範囲を把握することが先決です。
小論文
小論文では知識量だけでなく、問いに正しく答えているか、自分の考えを整理できているか、根拠を示して説明できているかが見られます。普段文章を書く機会が少ない方は、時間を計って実際に書く練習をしておくと安心です。
英語
英語が課される場合は、研究分野の論文や専門書の読解が中心になることが多いです。辞書の持ち込み可否も大学院によって違うため、あわせて確認しておきましょう。
社会人が通信制大学院を受験するときのポイント
通信制大学院を検討している方のなかには、仕事を続けながら進学したい方も多いでしょう。大学卒業から時間が経っていると「勉強から離れているけれど大丈夫だろうか」と不安になるかもしれませんが、社会人ならではの経験は入試でも強みになります。
仕事で感じた疑問から研究テーマを考える
教育現場で感じた課題、福祉の仕事で感じた制度上の問題、企業で経験した組織運営の課題、地域活動で感じた問題など、実務経験のなかから研究テーマが見つかることは少なくありません。
「大学院で何を研究したいか分からない」という場合は、これまでの仕事や経験で感じてきた疑問を書き出してみるのも一つの方法です。
社会人向けの入試があるか確認する
大学院によっては、一般選抜とは別に社会人を対象とした選抜を設けています。社会人選抜では筆記試験が軽減されていたり、実務経験や研究計画を重視した面接が行われたりすることがあります。一般選抜だけでなく、自分が利用できる入試方式がないか確認してみましょう。
入試の前に授業を体験できる通信制大学院もある
「いきなり入試を受けるのは不安」という方は、科目等履修生などの制度を利用して、正規の学生として入学する前に一部の授業を受けられる大学院もあります。入試を受けずに書類選考などで受講できることが多く、大学院の授業のレベルや、仕事と両立できるかを実際に確かめられます。大学院によっては、入学前に修得した単位を入学後に一定の範囲で認定してもらえる場合もあります。
ただし、科目等履修生として学ぶだけでは修士の学位は取得できません。学位を目指す場合は、最終的に正規の入試を受けて入学する必要があります。
入試だけでなく、学び方まで比較して選ぼう
入試内容を調べていると、「自分が受験できそうな大学院」を基準に進学先を探したくなるかもしれません。しかし、入試は大学院生活の入口にすぎません。
進学先を選ぶ際には、研究したい分野を学べるか、自分の研究テーマに合う指導を受けられるか、オンラインでどこまで学べるか、スクーリングは必要か、仕事と両立できるか、学費はいくらかかるか、といった点も比較することが大切です。
通信制大学院は、学べる分野や学習方法、費用がそれぞれ異なります。複数の大学院の資料を取り寄せて比較しながら、自分に合った進学先を探してみましょう。
通信制大学院の入試に関するよくある質問
入試の過去問は入手できますか?
公式サイトで公開している場合や、大学院へ請求できる場合があります。筆記試験がある場合は、まず過去問の公開状況を確認してみましょう。
研究テーマが完全に決まっていなくても受験できますか?
求められる具体性は大学院によって違いますが、少なくとも「何を研究したいのか」「なぜ研究したいのか」は整理しておく必要があります。テーマが漠然としている場合は、関連する本や論文を読みながら、自分が何に疑問を持っているのかを掘り下げてみましょう。
指導を希望する先生には出願前に連絡した方がいいですか?
出願前の事前相談を推奨している大学院もあれば、連絡方法を指定している大学院もあります。自己判断で連絡するのではなく、募集要項や公式サイトでルールを確認してから行動しましょう。
複数の通信制大学院を併願できますか?
入試日程が重ならなければ併願できることが一般的です。出願期間や試験日に加え、合格後の入学手続きの期限も確認しておきましょう。
入試はオンラインで受けられますか?
面接をオンラインで実施する大学院もありますが、通信制であっても入試がすべてオンラインで完結するとは限りません。試験方法や試験会場は募集要項で確認しておきましょう。
まとめ|まずは募集要項を取り寄せて準備を始めよう
通信制大学院の入試は、研究計画書と面接を中心に、大学院によっては小論文や専門科目などの筆記試験が加わります。通信制だから簡単というわけではなく、「何を研究したいのか」が明確になっているかが合否を左右します。
受験を考え始めたら、次の3つから始めてみましょう。
- 研究したいテーマや、仕事で感じてきた疑問を書き出す
- 気になる通信制大学院の資料を取り寄せ、入試方式・日程・出願資格を確認する
- 研究計画書の作成と、証明書類の取り寄せを早めに始める
入試方法だけでなく、学べる分野や学習方法、学費もあわせて比較しながら、自分に合った進学先を見つけてください。

